Le Tour de France '97 ちょっと 観戦記

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CANNONDALE

7月は一緒にツール見に行こうよ!

 モロッコでのツーリングが一段落した6月ももう残り少なくなった頃、せっかく近くまで来ているのだからと、僕はツール・ド・フランスを見に行くことにした。
 モコッロのフェスから飛行機で約5時間。思ったほど暑くない、意外と涼しくて過ごしやすいパリに到着。

 僕は自転車が好きといっても、自転車での旅が好きなツーリング派なので、わざわざツールを見るためにフランスまで出掛けるほどの熱狂的なツール・ファン、あるいはレース・ファンではないが。
 4月に日本を発つ前に、ある自転車雑誌を編集している某氏に

「せっかくヨーロッパの方に行っているなら、7月は一緒にツール見に行こうよ! 一生に一度見れるか見れないかって言うくらいのものなんだから!」

と声を掛けられたのがきっかけだった。
 それまでは、ツールのTV番組を時々見るくらいで別世界のように思っていたツールだが、それほどまでにツールに期待している彼の言葉は、ちょと新鮮でもあった。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出発前のフェスティナの選手達

ツールの”プロローグ”

 1997年7月5日。ツール初日のプロローグは、わずか7.3kmのタイムトライアルだ。RUEN("ウォン"と発音するらしい)の市街をぐるっと一周する。
 選手達は、観客から見ればほとんど全力疾走しているように感じられる。が、"プロローグ"ということもあって、各選手の表情には若干の余裕が感じられる。

 今日から三週間もの長い間、自分と他の選手とそして厳しい自然を相手にして戦い続ける選手達は、一体どんな気持ちでプロローグのスタート台に上っているのだろうか?
 '96ツールの手記(*)で、今中大介はこう語っている。

 「そうして、いよいよ俺の番。スタート台に立つ時点で緊張はなく、”ツールを走る”という興奮はあるものの、いつものように走ることに集中していた。レースはレース、特別な気負いはない。」 と・・・。

   * サイクルスポーツ'96年9月特大号別冊付録「1996 Tour de France」
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TEAM Poltiの選手

「・・ブン・・・」

 彼らの走るスピードはすごいの一言につきる。
 道路の柵から身を乗り出して、彼らが来るのを待ち構えていると、目の前を通りすぎる音はまるでエンジン音のしないF1のようだ。
 コーナーを曲がって今近づいてきたと思ったら、「・・ブン・・・」と、分厚い空気の壁をいとも簡単に切り裂き一瞬のうちに視界から消え去る。

 下りでは優に70・80km、平地でも50・60Kmは出ていると言われているが、まったく人間業とは思えない。この「ブン」という音は、一旦耳にしたらはなれそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレスセンターの記者達

電子メールで、ス〜イスイ

 各国のジャーナリストが集う「プレスセンター」は、巨大なビルの数フロアを借り切って用意されている。
 数百人規模の記者会見場もあれば、数十人が同時にパソコンで記事を書いたり送ったり出来るフロアもある。ビル内では、コカ・コーラやミネラル・ウォーターが良く冷えたクーラーボックスの中で出番を待っている。おそらく、オフィシャル・スポンサーが提供しているのであろう。

 各国のジャーナリスト達は、リアルタイムの原稿を持参しているノート・パソコンにすばやく打ち込み、電子メールでそれを待ちわびている者のところへ送るのだ。そしてその原稿は、瞬時にその宛先に届く。
 この記事を読んでいる方は、毎日当然のようにこの電子メールを利用していると思うが、フランスで書いた原稿がすぐに日本の雑誌社あるいは新聞社に届くとういう現実はじつにエキサイティングだ。

 高画質のデジタルカメラの画像だって、スイスイと送れるようになる日も近い!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街路樹に栄養補給!?

二日目のスタート  ツールに出場している選手達は、僕から見ればスーパーマンと呼んでも過言ではない。
 ほとんど毎日、200kmを越える距離をガンガン攻め、走りながら流動食をエネルギーに替え、ギャラリーの応援に応えるべく炎天下の中をひた走る。
 体力や精神力もさる事ながら、消化器系の内臓機能も強くないとツールで生き残ることは辛いらしい。

 そんな彼らも実際のところやはり人の子、スタート直前になると、緊張の余りなのか、前もって済ませておくのかはわからないが、催してくるらしい。
 メイン・ロードから少し外れた街路樹の植え込みに、人目をはばかること無く堂々と、数人そろってせっせと栄養を補給している姿が、ちらほらと見受けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨年チームPoltiのイマナカが乗っていた”COPPI”

あの「イマナカ」はどこに・・・

 ツール初日の当日まで、僕も友達のフランス人も、あの日本の「イマナカ」が出場するものだと確信していた。そして、その事が同じ日本人としてすごく誇らしいことであったし、彼を応援することを楽しみにしていたのは言うまでもない。

 実際スタート地点のすぐ傍に、フランスやイタリアといった各国の国旗に混じって日本の国旗も、確かに風にはためいているのだ。
 しかし、RUENで知り合ったジャーナリストから、「イマナカ」はレース直前にメンバーから外されたことを知らされた。詳しいことはわからないが、とにかく「イマナカ」は今年のツールには出ないのだ。
 昨年、完走こそ出来なかったものの、持てる力を最後まで出しきり気持ちよく戦列を離れたあの今中大介はもうここにはいないのだ。

   * 今中氏は1997年に現役を引退し、現在は自ら会社を起こして頑張っておられるようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール前の応援団

ツールというお祭り

 ゴール間近の観客席では、勢いよく最終コーナーを曲がり選手がストレートに飛び込んでくると、いっせいに歓声が沸き起こる。その歓声はその選手がゴールするまで衰えることが無い。
 道路の左右の仮設スタンドには、年に一度のツールというお祭りを目いっぱい楽しもうとしている人々が、そこで待ち構えているのだ。
 彼らのだれもが、次は一体誰が飛び込んでくるのか?、自分のひいきの選手は何分何秒でゴールするのか?、期待と興奮でいっぱいだ。

 スタンドで絶え間なく演奏を続けているバンドも、すべての選手が走り終えまだ皆の興奮が冷めやらぬ中、夕暮れまで隊列を作り演奏しながら市街を練り歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町で見かけた、タンデム・バイク

愛する二人のタンデム・バイク

 RUENの町を散策していると、時々荷物をフル装備したタンデム・バイクが目にとまる。
 もちろん、普通のレーサーやMTBはそこら中で見かけるのだが。タンデムに限って、荷物はフル装備なので余計に目立つのだろう。

 彼らは、ヨーロッパツーリング中に、この記念すべきツールのスタート地点であるRUENに立ち寄ったのだろうか? それとも、このスタートを見るために仲良く二人で走ってきたのだろうか? どちらにしても、大変うらやましいカップルであることには違いない。
 愛する人と一緒にしかも自転車で旅できるなんて、こんなに楽しくてワクワクすることがこの世にあるか!? って言えるくらい、素晴らしいことのように思えてしまう。もちろん日本にも、そんな夢を実現している宇都宮夫妻がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精力的に取材する九徳氏

美味いビール

 ヴィラージュで九里氏に出会った。取材も兼ねてツール観戦にきているとのことだった。
 この九里氏、初対面の僕にも全く気取ったところが無く、自転車と旅が好きな気さくな兄ぃだった。
 今晩の宿をまだ予約していなかった僕は、九里氏の勧めで氏がチェックインしている宿に足を運んでみたが、ラッキーにも隣の部屋に空きがあり、そこに落ち着くことが出来た。

 ツール観戦が終わり、宿に帰った僕たちは、宿の近くの明るい雰囲気のバー兼レストランのようなところで、グイっとビールをのみ、フレンチ・フライやチーズといったつまみを注文した。
 氏は、昨夜遅くにこの目の前の道路を歩いていて、体の大きな女性にカツアゲされそうになったが。「アッ、あれは!」なんてあさっての方を指差しながら叫んで、相手がそっちを見ている間にうまく逃げたそうだ。まるで漫画を読んでいるみたいに痛快な話だが、世界各国を旅している九里氏ならではの機転ともいえる。

 僕らは夜が更けるまで自転車や旅について語り合った。日本を発って以来3ヶ月、久しぶりに美味いビールを飲んだ気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Copyright © 1998 Kisen Katsukawa/ 勝川 喜仙